これまでの経緯について

知的障がい者卓球連盟の強化コーチとして

日本知的障がい者卓球連盟の強化コーチとして2017年3月に任命を受け、2017年の世界選手権大会(団体)やアジアユース大会で監督として日本代表チームを引率した。2018年には、5月のスロバキア・スロベニアオープン大会から始まって、8月のチャイナ・オープン、9月のチェコオープン、そして10月のパラ卓球世界選手権大会(個人戦)にいたるまで知的パラ卓球日本選手団の監督・コーチを務めた。海外における移動や業務にも慣れていたため、荷物の紛失、車椅子の破損や移動バスへの乗り遅れなど突発的な問題が起こってもすぐに対処することができた。選手団メンバーにおいては事故もなく、支障をきたすような病気やけがもなく、すべての海外遠征を終えることができたことはとてもありがたいことである。遠征の目的である大会成績においても、男女ともに胸の張れる好成績を達成することができた。2019年は、5月のススロベニア大会、7月のアジア選手権大会、8月には初のジャパンオープンが東京で開催され、私は総監督をサポートしながら主に女子チームを担当した。最後に知的障がい日本代表チームを率いたのは、9月のチェコオープンと10月のチャイナ・オープンである。選手団全体を見ながら主に男子チームを監督し、チャイナ・オープンでは男女ともに個人で金メダル、男子団体でもライバルである韓国に勝って金メダルを獲得した。東京パラリンピックも近づき、どうやってランキングを上げて、パラリンピックへの夢を実現させるかが、一番の関心事だった。

調査の結果とその影響

2019年11月頃に一人の選手の親から、監督としてふさわしくない言動があったという内容の手紙が出され、その後別な選手の親からの相談もあったということで、コンプライアンス委員会から調査を開始するという通知書を受け取ったのは12月28日のことである。

2020年1月から3月31日までの3ヶ月間は、多くの国際大会が控えており東京パラリンピックに出場するための最後のランキング争いが行われる重要な期間だった。しかしながら、コンプライアンス委員会による調査が始まったことから、国際大会への派遣など一切の業務に参加できないこととなった。私を頼りにし、必要としていた選手や関係者には、多大なご迷惑やご心配をかけることになり、本当に申し訳なく思っている。早く疑いを晴らして、再びサポートしてあげたいと願っていたが、5月1日付で受け取ったのは、相談のあった6項目のうちの一つであるセクシャルハラスメントに関する項目が認定されたという通知だった。

コンプライアンス委員会の通知を受けて、限られた期間で弁明を行う必要に迫られた私は、パラスポーツ関係者の助言もあって弁護士探しを始めたが簡単に見つかるわけもなかった。2020年2月8日の全関東社会人卓球選手権大会の50代の部で、2回戦で前回のチャンピオンに逆転勝ちして初めて決勝まで進むことができた(後輩の渡辺輝選手に敗れて準優勝)。このときに応援してくれた若者の一人が大沼さんで、弁護士をしていると聞いていた。卓球クラブのLINEで名前を見つけて連絡をとり、代理人として弁護をお願いした。スロベニア大会で一緒だった同僚のコーチや保護者の目撃証言など様々な証拠を陳述書に添付して、5月21日に「セクシャルハラスメントにあたる事実はない」とする弁明書をコンプライアンス委員会に提出することができた。

しかしながら、6月5日にコンプライアンス委員会は、本件行為がセクシャルハラスメントに該当し「指導」の処分課すことが相当であるという答申書を理事会に提出している。連盟の理事会が「指導の処分とする」ことを決議したのは7月29日のことである。

日本スポーツ振興センター(JSC)第三者相談・調査委員会の関与

3月4日に日本スポーツ振興センター(JSC)からの通知・連絡を受けて、第三者相談・調査委員会のヒアリングを3月9日に受けることになった。指導の内容に関する具体的な質問はなく、念のためコンプライアンス委員会のヒアリングと同じ回答を書面でも提出した。ヒアリングは、結局、何を訴えられたのかもわからいまま終わった。このJSCの第三者相談・調査委員会は、3月31日に知的障がい者卓球連盟に対し勧告を出している。その内容は「JSCと して申立人が本件選手の身体に触れるなどの行為を認定したので、申立人が本件選手の処遇について適切に対処するよう助言し、 再発防止策の報告を要請するものあった。(仲裁判断より)」