知的障がい者卓球連盟のコンプライアンス委員会(規程)は2017年5月に発足している。コンプライアンス委員会で取り上げられたのは本件が初めてである。
ヒアリングの質問(相談・訴え)とそれに対する回答
ボランティアであるか有料であるかに関わらず、コーチングは一つのプロフェッションであり、スポーツコーチをする上でも他の職業と同様に、様々な問題に直面します。コーチしてほしいと頼まれたときに、よもやその選手や関係者から訴えられることになろうとは夢にも思わないでしょう。しかし、現実に、そういうことに巻き込まれることはいつでも誰にでも起こりうることなのです。本件はそのような事態に陥った一つの例であり、そういった事例が起きた時に冷静に対応できるよう参考にしてもらえればと思い、ここに記します。2020年2月14日に行われたヒアリング調査では、二人の保護者から出された相談をもとにした以下の6項目の質問事項に答えることを求められました。書面と口頭で以下のような趣旨の回答・弁明を行っています。この6項目の中で、5項目については問題ない、との判断がなされました。セクハラに関連する質問は5番目にあります。この5番目の項目への回答の中で、国際大会における技術指導の成功例として紹介した事例を取り上げられて、それがセクシャルハラスメントに該当する行為であると認定されたという通知を、5月1日に受ける結果となりました。
1.2018年5月にスロバキア及びスロベニアで開催された大会期間中の選手に対する不適切発言(「君らは僕の研究材料」という発言)の有無及びその趣旨 :→上記大会期間中、体育館で練習の合間になされたとされる発言内容です。
(当方の回答の要旨:このような発言はまったくしていない。国際大会の練習中の選手への発言としても不自然。)
2.2018年5月にスロバキア及びスロベニアで開催された大会期間中の選手に対する不適切な指導の有無及びその趣旨→試合前に選手の自信を無くす発言をすること、試合後のミーティング時間が長いこと、長時間のミーティングを選手に窮屈な状態で強いること等、です。
(回答要旨:アスリートファーストで日本代表としてロールモデルになれるように選手全員が一言ずつ一日の感想と明日への心構えを述べることをルーティンとしている。選手間の団結や交流にもつながっている。場所は主に食堂のテーブル等を使う。場所がない時は監督の部屋や大きめの部屋を使う場合もある。)
3.2018年5月にスロベニアで開催された大会期間中に行われたとされる飲酒を伴うパーティー開催の事実の有無及びその内容:→団体戦の前日に行われたと指摘されている帯同コーチの誕生パーティーについてです。「強化指定選手行動規範」では、大会期間中、選手の飲酒は禁止されていることから、この時のパーティーの内容についてお聞きします。
(回答要旨:ミーティングのときに選手の保護者から母体コーチの方の誕生日だから部屋で誕生ケーキなどでお祝いする旨のお話があった。誰も異議を唱えず、問題ないことと思われた。自分は明日の作戦準備等があり1時間半ほどして挨拶したが、ほとんど終わっていた。選手はケーキとソフトドリンクをいただいたと聞いている。日本代表としてあるまじき行為や試合への悪影響があったという認識は持っていない。)
4. 選手に対して実施したアンケートの内容:→2018年8月の強化合宿でのアンケートの内容について、選手が理解できない内容が多く苦痛を感じたとの指摘があります。アンケートの内容を開示して頂けますと助かります。
(回答要旨:練習後に選手からその感想や評価を聞いて、次の練習メニューを一緒に組立ててた。「ミーティング」の評価が男女ともに高かった等、アンケートの内容・回答を提示。)
5.女性選手に対する指導の際における相手の意に反して腕や腰等の身体を触る行為の有無及びその内容:→女性選手の指導の際に、本人が身体に触られるのが嫌であるにも関わらず、手や腰を触られた、本人は指導の後に泣いていた、という指摘があります。
(回答要旨:そのようなことはなかった。身体の一部に触れた指導の事例として、A国際大会において、個人戦で敗れて意気消沈していたX選手への指導を女子監督に依頼されて行った例を紹介する。X選手はその直後に始まった団体戦で世界ランク上位者に勝ち、団体準優勝を果たしている。本人も保護者も喜んでいた。)
6.国際大会での選手の指導における公平性に欠ける対応の有無:→大会期間中、一部の選手にのみベンチコーチに入ること、また、一部の選手にのみ生活支援(荷物を持ってあげる等)を行っていること、が指摘されています。
(回答:多くの選手に保護者か帯同コーチのいずれかが同伴されているところ、ただ一人で参加している知的障がい選手がいた場合は、孤独や不安を感じ、食事や健康管理にも注意する必要がある。例えば、他の選手が保護者などに荷物を持ってもらっている中で、一人だけ自分で全部持って移動している選手の荷物を持ってあげたことは公正・公平であると考えている。親や他の選手にも「持ってあげようか」と訊ねているが「自分で持つ」と答えられた場合は、本人の意志を尊重している。)
ベンチコーチが必要な選手が同時に複数いた場合などの判断基準は、以下の通りである。
- 選手の意志(アスリートファースト)
- 世界ランク・国内ランク順位
- 試合の重要度
- 監督・ケアの必要度
(特)緊急性
以上