月別: 6月 2019
22回 チャンピオンシップ大会
6月8-9日、恒例の知的パラ卓球の日本チャンピオンを決める大会が横浜市の平沼体育館で開催された。私にとっては三度目のボランティアサポート兼観戦。日本の頂上を目指して毎年ドラマが生まれる。今年は男子131名、女子43名が参加。年々参加者や参加都道府県が増えている。障害者の大会では3-4人のグループでリーグ予選を戦って、上位2人が決勝トーナメントに進出するという方式をとる。予選下位となった二人にもフレンドリーマッチという呼び名で二次トーナメントに参加してもらう。全日本におけるランキングを明確にするために、男子は3位決定戦から5~16位までのランキング戦、女子は3位決定戦から5~8位のランキング戦も行っている。男子の場合は、1~12位の選手、女子の場合は1~8位の選手に12月に実施されるチャンピオンズリーグの上位リーグ戦に参加する権利が与えられる。チャンピオンシップ大会とチャンピオンズリーグの結果をもとに国内ランキングが決定する。この国内ランキングポイントと世界ランキングポイントを合計して上位者からナショナルチーム・メンバーが選考されるため、今大会は選手やコーチにとってもとても重要な意味を持つ大会である。
今大会のハイライトは、女子シングルスの決勝。第一回大会から今回の22回大会まで連続出場しているFIDの代表選手、伊藤槙紀さんが一昨年に優勝し昨年も準優勝した美遠さゆりさんに2ゲームダウンから3ゲームを連取して大逆転勝ちした試合だろう。2013年を最後に優勝から遠ざかっていた伊藤選手は、回転とスピードのある美遠選手の巻き込みサーブからの攻撃に第1、第2ゲームは圧倒される。しかしここから驚異的な粘りとフォアとバックへのコースをついたバックボレー攻撃の連打を見せた伊藤選手がじわじわと追い上げた。どちらが勝ってもおかしくない緊迫したラリーの応酬が続き見ごたえのある試合。第3、第4ゲームを伊藤選手がとり返して、勝負は最終ゲームにもつれ込んだ。攻撃力に勝る美遠選手がしっかりと安定したフォアドライブとバックボレーで終始リードを保つ展開。しかし勝負をあきらめずにバックのナックルカウンターを打ち続けた伊藤選手が挽回して10-8とする。美遠選手はサーブ3球目で一点を返し10-9。次のボールもサーブ3球目で決まるかと思われたが、これをブロックした伊藤選手がバックハンドで反撃、11-9で大逆転勝利。二階で応援していたお母さんたちが抱き合って喜ぶ姿が印象的だった。
男子の方は、長崎瓊浦高校の浅野俊選手が初優勝。若手の有望選手として注目されていたが、昨年敗れた同じく若手の木川田選手に3-2の接戦で勝って勢いにのる。3年連続優勝で世界ランク7位の加藤選手と世界ランク8位の竹守選手を連破しての優勝は立派。もち前のパワーとスピードに、バックチキータの安定性とバックのブロック力を加えて、ついに手にした栄冠。2017年にアジアユースで優勝した木川田選手や今回ランキングで8位にくいこんだ山本選手らとともに期待のヤングジェネレーションである。日本の知的パラ卓球界は着実に成長している。東京パラを目指す世界ランク上位選手らに続き、これからも日本が世界の知的パラ卓球とインクルーシブスポーツに向けたリーダーシップをとるべく頑張って欲しいものである。
東京パラリンピックもまじかとあって、報道関係者も多く、ライブの生中継もあった。好試合の連続で知的パラ卓球の醍醐味を少しでも多くの人に知ってもらうことができたのではなかろうか。30人もの審判員ボランティアや選手の家族、友人などのサポーターに支えられて、本当にアットホームでかつスリリングな大会である。それぞれが様々な能力や個性の違いをもつことを理解したうえで、心技体の総合力を競うスポーツを楽しみ、社会のノーマライゼーションを促進していく、そんな縮図を見せてもらっているようだ。ありがとうございます。