「孤闘  三浦瑠璃裁判1345日」の感想

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著者 西脇亮輔

司法試験の合格者であり司法修習も行った著者は久米宏のニュース番組にあこがれてテレ朝のアナウンサーとなった異色の経歴。その面白い経歴ゆえに採用となったという話もあるが。結局のところ、筆者は司法の専門家であるがゆえに、ツイッターを使ったプライバシーの侵害という現代的な社会問題に憤慨し、またそれにひとりで立ち向かうための知と勇気を持ち合わせていたのである。(私も知的障がい者卓球連盟と係争中であるが、弁護士を使わずに自分一人で裁判を闘うのは、一般人には難易度が高すぎる。)

周囲の関係者はみな報復を恐れてしりすごみし、裁判するということ自体が人権を守るポジティブな行為ではなく、社会の足並みを乱すネガティブな行為と反対する者も多い。そもそも裁判で孤軍奮闘するばかりでなく、社会的にもひとりぼっちにならざるを得ない。(そればかりか、身近な人であっても、裁判を起こすような人間は、怖い人種と思われてしまい、友人関係すらこわれることもある。)

裁判というものは準備書面のやり取りによって行われる。これらは基本的に、それぞれの弁護士が作成するものである。当事者は裁判所にも出頭することは、最後の証人喚問ぐらいしかない。(私も、この準備書面のやり取りに自分でも直接関わってきたが)とにかく、相手の書面の目的が、こちらの信用や人格をおとしめ、はずかしめようとするものであるため、その書面を読むこと自体が、精神的な拷問となる。

高等裁判所そして最高裁の結果の通知を待つ著者の、不安で不安定なぎりぎりの精神状態も(私がコンプライアンス委員会やスポーツ仲裁機構のパネルの結果を待っていたときのように)共感できるものがあった。

著者はこの裁判の記録を出版し、世間に公開することで、SNSによるプライバシー侵害に警鐘を鳴らし、被害を減らし、被害者を支援しようとしている。

私にとっても、貴重な前例であり、学びの多い、そして具体的な行動の指標を示す佳き指南書である。

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